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とうざいよう

谷崎潤一郎 「陰翳礼賛」より・・・

もし東洋に西洋とは全然別箇の、独自の科学文明が発達していたならば、どんなにわれわれの社会の有様が今日とは違ったものになっていたであろうか、ということを常に考えさせられるのである。例えば、われわれがわれわれ独自の物理学を有し、科学を有していたならば、それに基づく技術や工業もまた自ずから別様の発展を遂げ、日用品百般の機械でも、薬品でも、工藝品でも、もっとわれわれの国民性に合致するような物が生まれてはいなかったであろうか。いや、恐らくは、物理学そのもの、科学そのものの原理さえも、西洋人の見方とは違った見方をし、光線とか、電気とか、原子とかの本質や性能についても、今われわれが教えられているようなものとは、異なった姿を露呈していたかも知れないと思われる。私にはそういう学理的なことは分からないからただぼんやりとそんな想像を逞しゅうするだけであるが、しかし、少なくとも実用方面の発明が独創的の方向を辿っていたとしたならば、衣食住の様式は勿論のこと、引いてはわれらの政治や、宗教や、藝術や、実業などの形態にもそれが広汎な影響を及ぼさない筈はなく、東洋は東洋で別箇の乾坤を打開したであろうことは、容易に推測し得られるのである。

中略

 そう云うことを考えるのは小説家の空想であって、もはや今日になってしまった以上、もう一度逆戻りをしてやり直す訳に行かないことは分りきっている。だから私の云うことは、今更不可能事を願い、愚痴をこぼすのに過ぎないのであるが、愚痴は愚痴として、とにかく我等が西洋人に比べてどのくらい損をしているかと云うことは、考えてみても差支えあるまい。つまり、一と口に云うと、西洋の方は順当な方向を辿って今日に到達したのであり、我等の方は、優秀な文明に逢着してそれを取り入れざるを得なかった代りに、過去数千年来発展し来った進路とは違った方向へ歩み出すようになった、そこからいろいろな故障や不便が起っていると思われる。尤もわれわれを放っておいたら、五百年前も今日も物質的には大した進展をしていなかったかも知れない。現に支那や印度の田舎へ行けば、お釈迦様や孔子様の時代とあまり変らない生活をしているでもあろう。だがそれにしても自分たちの性に合った方向だけは取ってていたであろう。そして緩慢にではあるが、いくらかずつの進歩をつゞけて、いつかは今日の電車や飛行機やラジオに代るもの、それは他人の借り物でない、ほんとうに自分たちに都合のいゝ文明の利器を発見する日が来なかったとは限るまい。早い話が、映画を見ても、アメリカのものと、佛蘭西(フランス)や独逸(ドイツ)のものとは、陰翳や、色調の工合が違っている。演技とか脚色とかは別にして、写真面だけで、何処かに国民性の差異が出ている。同一の機械や薬品やフィルムを使ってもなおかつそうなのであるから、われわれに固有の写真術があったら、どんなにわれわれの皮膚や容貌や気候風土に適したものであったかと思う。蓄音器やラジオにしても、もしわれわれが発明したなら、もっとわれわれの声や音楽の特長を生かすようなものが出来たであろう。元来われわれの音楽は、控え目なものであり、気分本位のものであるから、レコードにしたり、拡声器で大きくしたりしたのでは、大半の魅力が失われる。話術にしてもわれわれの方のは声が小さく、言葉数が少く、そうして何よりも「間」が大切なのであるが、機械にかけたら「間」は完全に死んでしまう。そこでわれわれは、機械に迎合するように、却ってわれわれの藝術自体を歪めて行く。西洋人の方は、もともと自分たちの間で発達させた機械であるから、彼等の藝術に都合がいゝように出来ているのは当り前である。そう云う点で、われわれは実にいろいろの損をしていると考えられる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この本を読んだきっかけは、欧州の建築科の学生の間でこの本が人気という話を聞いてなのです。知らなければ恥ずかしいなと思い、この年でようやく・・・。

物質的な欲でぶっちぎりで突っ走ってきた西洋は、今は心の時代なのかな・・・。心を大事にしてきた東洋に自然と興味がいくのかな・・と思うことがある。うーん、そうであって欲しい私の願望かな。

今となっては、こう進んでいる流れに身を任せるしかないのだけれど、うつろひゆく世に流れ流されながらも独自性(レアな価値観)を保つ日本は、やはり美しい国だなぁなんて遠くから想ったりして。大事にしなきゃいけないこと、日本の心は変わらないでいて欲しいなと・・また願望なのかな。


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Nana ナナ

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